食の重要性

2017.01.09 Monday

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    「我々自身は、食べたものによって作られている。」これは、アメリカに古くからある諺です。日本でもここ十数年の間に、戦後の食生活の激変の結果が現れてきています。昔、これほどアレルギー性疾患が取り立たされたことはありませんでした。生活習慣病、血液性疾患、慢性疾患などもここ20〜30年ほどで急増したのです。

     

    ここに、みなさんにあまり知られていない事実があります。第二次世界戦後、敗戦国となった日本は、アメリカと不平等条約を交わしました。一方、勝利国となったアメリカでは、世界大戦のために農家や酪農家の人たちがアメリカ人の胃袋に入れるための、パンを作る原料としての小麦、メイン・ディッシュとしての肉、そして牛乳をたくさん作り、結果的に生産過剰状態に陥っていました。今まで「作れ、作れ」とあおってきたものを、今更アメリカ政府も、「生産規模を縮小しろ」とは言えなくなりました。そればかりか、戦争でストップした経済を活性化させるため、輸出に拍車をかけていったのです。
     

    一番のターゲット国は日本でした。そして、アメリカ政府は「学校給食」に目をつけたのです。「日本人が小さいのは、肉を食べないからだ。牛乳を飲まないからだ。」そう言って、日本政府に学校給食としてパンと牛乳と肉を売り込んだのです。もちろん、当初は牛乳そのものではありません。敗戦国の日本に、そんな肉や牛乳を輸入するだけの力も、保存するための設備を整えるお金も残っていなかったからです。そこで、最初に導入されたのがスキムミルク、いわゆる脱脂粉乳です。

    元々、日本人は牛乳や乳製品にある「乳糖」というものを、分解する酵素を遺伝的に持つ人が少ないのです。つまり、穀食人種である我々アジア人は、基本的に西洋人とは腸の長さも、持っている消化酵素の種類も違うわけなのです。そんなわけなので、導入当時何が起こったか。それは、トイレに駆け込む子供たちが激増したという現象でした。

     

    その「肉食文化」を日本に定着させたアメリカも、現在は「長寿国の日本へ習え」とばかり、日本食が研究され、一般の生活にも急激なスピードで入り込んできています。6年ほど前、私たちがハワイに行ったとき、驚いたことにハンバーガーショップには日本人ばかりがひしめいており、和食の店には欧米人ばかりで、私たちが行ったときには和食の店にいた日本人は私たちだけでした。

     

    ここで、一言お断りしなくてはなりませんが、私は特に反米感情を持っているわけではありませんし、アメリカの「いいと思うものはたとえ先駆的なものであっても、取り入れていくべきだ」という考え方にも、すごく共感を持っています。実際、そうした考え方に柔軟性があるからこそ、アメリカはホリスティック・ケアの最先端の国でもあります。ただし、残念ながら日本との関係において(特に経済面)は、やはり未だに「勝利国」と「敗戦国」といった隔たりは埋められていないと感じます。その一例として、上記のようなことが挙げられるのです。

     

    日本の辿ってきた道に話を戻すと、戦後の高度成長期に伴い、経済が活性化されていくと、どんどんアメリカやヨーロッパから、食品や工業製品が輸入されるようになりました。その結果、私たちは今日、日本にいながらにして、世界中の食べ物が食べられるようになりましたが、そのために失ったものもたくさんあります。そのひとつが、「旬」というものです。本来、日本の気候風土では絶対に食べられないものや、本来、晩秋から冬にかけてが旬のはずの、りんごやみかんが真夏に存在したり、真夏にあるはずのバナナも寒い冬でも、スーパーや果物屋さんに並んでいることになってしまったのです。それが、身体にどういった影響を与えるか、多くの人たちが気付いていません。

     

    中国には「身土不二」という言葉があります。この言葉の意味は「土(住んでいる環境)と身(人間の身体)は別々のものではありませんよ。」ということなのです。寒い土地では、そのままの気候でバナナの木は育たないし、南国の地でそのままでは日本のようなみかんの木は育ちませんということです。つまり、植物も、動物も、自分の身体の中をよく熟知していて、それに合わせた土地に住み、生活をしているということなのです。中国医学では身体を温める食べものを「陽性」、身体を冷ます作用のあるものを「陰性」と呼んだりしますが、例えばみなさんは、冬に水炊きを食べられたことがあると思います。水炊きの主役は鶏肉であることも多いのですが、その鶏肉は身体を温める作用があるのをご存知でしょうか?そうした身体を温める作用のあるものは、出身地が寒い地域であることも少なくありません。実際、食される鶏は、中国やアメリカの寒い地域が出身であることが多いようです。豚は肉の中では「陰性」(身体を冷やす作用がある)なのですが、そうした豚は日本でも九州などの温暖な地方に多く分布しています。(食べ物全体で言えば、肉類は陽性に分類されますし、果物は陰性に分類されます。野菜は大きく分けて、根菜類(根っこを食べるもの)は陽性、葉っぱものは陰性に分類されることが多いですが、個々の分類はきちんとあります。)これらを無視して、好きなものを食べていると、風邪を引きやすくなったり、どうも体調が優れないという状態になりやすくなってしまうのです。

     

    コンパニオン・アニマルたちも同様で、動物病院では、一様に「ペットフードをあげて下さい。」と言われます。なぜかと尋ねると「人間と同じ食事ではいけないし、栄養のバランスが崩れるでしょう?」と言われます。もちろん、人間と全く同じ食事では彼らは病気になってしまいます。しかし、ペットフードが一番というのも本当なのだろうか?私自身、首をかしげることも仕事上たくさんありました。まず、アメリカのように、日本では人間と同じくらい、厳しいペットフードに関する基準や、それを審査する機関がありません。つまり、ほとんどがメーカーサイドの裁量と良心に任されている状態です。

     

    原材料に本当に安全なものが使用されているか、添加物の安全性や量、そうしたものを考えると、一ヶ月のペットの食事代金が、2000円、3000円で済んでいることへの疑問も湧いてきます。一度普通におうちのワンちゃん、猫ちゃんへの食事をご自身が、参考に作ってみられるとよく分かります。本当に人間が食用できるレベルで、(オーガニックなどでなくても)数百円のコストは一日分であってもかかるはずです。それに容器代、広告費、人件費などの諸経費が上乗せになっているはずです。いくら大量生産しても、とうてい2000円程度で販売するのには、無理がかかるでしょう。

     

    もちろん、私はペットフードの全てを否定しているわけではありません。手作りと比べると、保存も効きますし、手軽に与えることができます。今は数少ないながらも、良心的なペットフードを開発し、販売する業者さんも出てきていますので、上手に利用されることは、お奨めしたいと思います。しかしながら、あくまでペットフードは「加工食品」であるということは、忘れないで置いて頂ければと存じます。

     

    私たちは、毎日カロリーメイトだけを食べて一生を過ごすでしょうか?子供にベビーフードだけを毎日与え、成長期になってもレトルト食品だけを与えて過ごしていくでしょうか?実は、私たちの健康も病気のメカニズムもそのひとつは、食べ物に大きな鍵があります。正確には、私たちの身体に持っているDNAレベルでの、消化酵素と密接な関わりがあるのです。

     

    私たちは、生まれたときから体内にDNAレベルで、「保持酵素」というものを持って生まれてきます。これは、人間だけでなく動物も同じです。例えば、肉食動物であれば、肉を消化分解しやすいような、保持酵素を持って生まれてきているのです。食べ物を毎日食し、消化・吸収・循環・排泄を繰り返して、体内保持酵素は年数と共に、減少していきます。そして、体内の酵素が0になったとき、私たちは死を迎えます。つまり、「体内保持酵素の減少」=「老化」でもあるわけなのです。他がどれだけ元気でも、食べ物の消化・吸収・循環・排泄ができなければ、生きていくことができないからです。この体内保持酵素は、生まれた瞬間から減少していくだけで、決して増えることはありません。では少しでも長生きし、老化を先送りするにはどうすれば良いのでしょうか?

     

    ひとつは、「体内保持酵素の消費を緩やかにする」ことです。それには、自分の消化吸収のメカニズムを知って、それに見合った食材を使った料理を食べたり、食べる回数を決めたり、量を考えて食べていくことが必要になります。

     

    東洋医学では、「一日30品目」などという考え方はありません。なぜなら、「1日30品目」というのは、とりあえずそれだけ食べておけば、どれかは自分の体質にあった食べ物であろうから、消化・吸収がうまくいく「当たり」もあるだろう。という考え方だからであるのと同時に、食品添加物や環境汚染の影響で、食品汚染やビタミン・ミネラルの不足などを偏ることなく、分散することで、なるべくマイナスの影響を避けられるからということであろうと思います。

     

    例えばインド医学では、例えば水気の多い体質の人は、油分や水分を控えるように食事のアドバイスをしますし、火気の多い体質の人には辛いものや刺激物は、胃腸を痛める原因になるため、控えるようにアドバイスします。現代栄養学のように、決して「DHAの入っている魚は脳にいいから食べなさい」とか、「カルシウム補給は牛乳が一番よ」などとは言いません。それは、あくまで「一般論」であって、その人の身の丈にあったアドバイスではないからです。もちろん、私もレシピを作るときは、現代栄養学を参考にします。分量やエネルギー値を考える上では、必要であるからです。しかしながら、
    体質的に、例えば炭水化物系の食事が重い子に、ごはん中心のレシピは作りませんし、乳糖不耐性の子に、乳製品のレシピは用いません。たとえ、それが一般的に言われている「犬の栄養必要量」を下回っていたとしても、私は「その他大勢」の平均値よりも、「その子自身の体質」を重視します。

     

    しかしながら、食事を作ること自体がストレスになったり、仕事が忙しくて手が回らない、コスト的に難しいなどでどうしても手作りの継続ができない方もいらっしゃいます。それは人間のお母さんであっても、お料理に興味がない、自信がないという方にとって、毎日の料理は精神的負担にさえなることもあることと同じだと思いますので、そうした方はできる範囲で構わないと思います。一から自分の手で作り、それを食べてみてくれたときの反応ですが、私の経験上、食の習慣性が成長期にできあがってしまう、猫ちゃんは別として、ワンちゃんに関してはたいてい「喜んで食べてくれました。」「手作りにして体調が良いようなので、続けてみたいです。」「自分の食生活も見直すきっかけになりました。」という反応が大部分です。猫ちゃんに関しては、生後一年間に食べたものが、「食べ物」としての認識でインプットされてしまうことが多いため、キャットフードしか与えたことがないという方であれば、なかなか切り替えが難しいという方もいらっしゃいますが、少しでもお肉やお魚をあげた経験のあられる方は「切り替えて良かったです」という方が圧倒的に多いです。

     

    そうした反応が感じられるのは、生きた食材を使って、その子のために考えた食事を与えているからでしょう。そして、衛生面や安全性に配慮できるなら、できれば消化酵素(体内保持酵素)節約のために、できるだけ生で食材を与えることをお奨めしたいと思います。なぜなら、食べ物自身に含まれている酵素によって、食べた本人が持っている体内の保持酵素が節約できるからなのです。酵素は通常71度を超える死んでしまいます。つまり、ほとんどの加熱食品には酵素が入っていないということなのです。(ただし、寄生虫の問題があるため豚肉は除く。)ペットに生食を実践されている、ご家族の方にお伺いすると、「便通がよくなった」「ダイエットができた」「血液検査の値が改善された」などの報告もよく聞きます。アメリカでも「バーフ・ダイエット」として有名な食生活改善の実践方法です。もちろん、人間も同じ原理が適用できます。今まで加熱していたものを、生で食べることに切り替えていくわけです。(「煮魚や焼き魚」を刺身で食べるなど)

     

    安全面・衛生面から「生食」はちょっと・・・と思われる方で、なおかつ加工食品(ペットの場合はペットフード、人間の場合はレトルトや缶詰やそのまま食べられるものなどの加工食品)を食べることが多い方は、サプリメントや栄養補助食品で「消化酵素」を日常的に摂られることをお奨めします。
    サプリメントに抵抗がある方であれば、1日1杯のジューサーやミキサーを使った生ジュースが効果的です。私自身の体験では、朝食を生ジュースだけに切り替えて(その代わり、500CCを飲む)その他は何も変えずに、2週間で4kg痩せた経験があります。必ず絞りたてを30分以内に飲んで下さい。
    時間を置いた物は、消化酵素のはたらきが充分ではありませんので、気をつけて下さい。

     

    実は、私の実家で暮らしていた初代犬は、私が小学校3年生のときに舌に腫瘍ができて亡くなったのですが、その当時ではかなりの長寿であっただろう、17歳でした。私の生まれる前から居た子ですから、当然ペットフードなどもらってはいませんでした。いわゆる「おじや」を魚を丸ごと入れて、私の祖母が毎日炊いてやっていたのです。それに加え、毎朝伯母が生ジュースを飲ませていたのです。もちろん、最後にガンになってしまったのですから、褒められたものではありませんが、それには環境要因も家族の間のストレスもあっただろうと思っています。食事に関して言えば、それまで病気らしい病気もなしにきていた子なので、体質にあった食事であったのだろうと思います。

     

    今日、人間と、人と暮らす動物と、人のそばで人の影響を多く受ける動物たちにのみ、色々な異変が起きてきています。アトピーのカラスやタヌキ、奇形のハトや山ザルなどもその典型的な例です。

     

    「我々自身は、食べたものによって作られている」という意味を、当クリニックでは今一度、みなさんと一緒に考えて生きたいと思います。

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